アルプスの少女ハイジ

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アルプスの少女ハイジ
著者 ヨハンナ・シュピリ
装幀 Rudolf Münger
発行日 1880年1881年
ジャンル 児童文学
スイス
言語 スイスドイツ語
形態 ハードカバーペーパーバック
次作 Heidi Grows Up(1938) 『それからのハイジ』
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ジェシー・ウィルコックス・スミスによるハイジのイラストレーション(1922)

アルプスの少女ハイジ』(アルプスのしょうじょハイジ、Heidi)は、スイスの作家ヨハンナ・シュピリ(またはスピリ)の児童文学作品である。1880年から1881年に執筆された。原題は『Heidis Lehr- und Wanderjahre』(ハイジの修行時代と遍歴時代、1880年出版)および『Heidi kann brauchen, was es gelernt hat』(ハイジは習ったことを使うことができる、1881年出版)である。

ドイツの文豪ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』および続編の『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』からその着想を採られたもので、教養小説(成長小説)としての色彩を持ったものである。キリスト教信仰に基づく描写が多く見られる。作者も属するドイツ語圏スイスのデルフリ村(マイエンフェルト付近の架空の村。イェニンス村がモデル)が舞台となっており、中盤にはゲーテの生地でもあるフランクフルトに舞台が移る。

あらすじ[編集]

  • Heidis Lehr- und Wanderjahre』(ハイジの修行時代と遍歴時代、1880年出版)
    フランクフルトからデルフリ村に戻ったハイジが祖父と再会し、ハイジの説得で祖父が永年拒んできた日曜礼拝に参加するまでを描く。
  • Heidi kann brauchen, was es gelernt hat』(ハイジは習ったことを使うことができる、1881年出版)

日本語訳[編集]

日本語訳の版本は過去様々なタイトルで100種類以上出版された。以下はその一部(抄訳も含む)。

映像化作品[編集]

アニメ[編集]

テレビシリーズとしては、ズイヨー映像の作品が有名だが、アニメ作品はほかにもいくつか存在する。以下はその一部である。

実写[編集]

舞台化作品[編集]

宝塚少女歌劇団[編集]

他の作者による「ハイジ」の続編[編集]

ヨハンナ・シュピリ自身は、「アルプスの少女ハイジ」の続編などは執筆していないが、他の作者による続編が公開されている。いずれも公式な作品というわけではなく、作者が異なれば、続編間の関連性も無い。

  • シャルル・トリッテン『それからのハイジ』(各務三郎 訳 ブッキング 2003年8月)
    ハイジは、クララの勧めによってローザンヌの寄宿学校へ入学する。卒業したハイジはアルプスに戻り学校の教師となる。
  • シャルル・トリッテン『ハイジのこどもたち』(各務三郎 訳 ブッキング 2003年8月)
    『それからのハイジ』の続編。ハイジとペーターは結婚してアルムの村で暮らしていた。ローザンヌの寄宿学校時代の親友の妹マルタは、祖母を亡くしたおりに心を閉ざしていた。ハイジはマルタを引き取って育てる。やがて、マルタも次第に心を開いていく。
  • フレッド・ブローガー&マーク・ブローガー『ハイジの青春 アルプスを越えて』(堀内静子 訳 早川書房 1990年8月)
    ("Courage Mountain"として映画化(邦題『チャーリー・シーンのアルプスを越えて』))
    14歳になったハイジは、アルプスを離れ、イタリアの寄宿学校へ行く。しかし、戦争が始まり寄宿学校は軍に接収され、ハイジたちは工場で酷使される。ハイジたちは脱走し、アルプスへと向かう。
  • 石川淳「アルプスの少女」(『おとしばなし集』所収 集英社 1952年11月)
    『戦後短篇小説再発見〈10〉表現の冒険』(講談社文芸文庫 2002年3月)に再録
    戦争が起こり、ペーターは兵士となる。平和が戻ったとき、ペーターとクララは再会しアルムに向かう。

類似が指摘される作品[編集]

2010年、ドイツの文学研究者ペーター・ビュトナー(Peter Büttner)により、この作品が1830年にドイツの作家、ヘルマン・アーダム・フォン・カンプが発表した作品「アルプス山地の少女アデライーデ(Adelaide - das Mädchen vom Alpengebirge)」に類似していることが指摘され、本作の下敷きとなった可能性が高いとした。この指摘にはスイスの新聞が「ハイジは盗作だった」と報じるなど波紋を広げた。ビュトナー自身は「私は盗作とは言わない。シェークスピアやゲーテも同じことをやっている」と話している[13][14][15]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c 荒木 2008, pp. 182–183, 第3節
  2. ^ フジテレビトリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 5』講談社、2004年。 
  3. ^ 楓物語』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
  4. ^ a b 「ロングセラーの周辺 ヨハンナ・シュピリ著『ハイジ』」『読売新聞』2011年2月21日付夕刊、6頁。
  5. ^ 「初公開!パイロット・フィルム いま見せる作品に賭けた熱き胸」『アニメージュ』1981年12月号、徳間書店
  6. ^ ZDF zeigt an Ostermontag neue "Heidi" in 3D-Optik” (ドイツ語). www.t-online.de. 2020年10月28日閲覧。
  7. ^ リスト制作委員会『アニメージュ アニメポケットデータ2000』徳間書店、2000年、p.122
  8. ^ 『アニメポケットデータ2000』p.102
  9. ^ 「もし、ハイジとクララが現代の高校生だったら...」大人気CMシリーズ第二弾,ORICON NEWS,2017年9月14日
  10. ^ "Heidi" (1974) TV mini-series Internet Movie Database
  11. ^ 増山久明編著 『NHK少年ドラマシリーズのすべて』アスキー、2001年、p.104
  12. ^ Heidi (TV 1993) Internet Movie Database
  13. ^ “「アルプスの少女ハイジ」に盗作?疑惑”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2010年4月13日). オリジナルの2010年4月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100416000645/http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20100413-OYT1T00477.html 2019年6月15日閲覧。 
  14. ^ “ハイジ:盗作だった? 愛称や筋書き、出版50年前の作品酷似 独の研究者指摘”. 毎日.jp. 共同通信社 (毎日新聞社). (2010年4月13日). オリジナルの2010年4月15日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100415071418/http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100413dde041040025000c.html 2019年6月15日閲覧。 
  15. ^ “Ur-Heidi aus dem Ruhrpott Ist Johanna Spyris Alpengeschichte geklaut?”. 3sat.online (3sat). (2010年4月7日). http://www.3sat.de/dynamic/sitegen/bin/sitegen.php?tab=2&source=/kulturzeit/themen/143450/index.html 2010年4月13日閲覧。 [リンク切れ]

参考文献[編集]

  • 荒木, 詳二「日本翻訳文学史における「ハイジ」翻訳(小特集 : 翻訳と情報社会)」『群馬大学社会情報学部研究論集』第15巻、群馬大学社会情報学部、2008年3月、171-194頁、CRID 1050564287616061952hdl:10087/3127ISSN 1346-8812 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]