柴犬

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柴犬
赤毛の柴犬
赤毛の柴犬

白毛の柴犬

黒毛の柴犬
原産地 日本の旗 日本
特徴
体重 オス 10 kg (22 lb)
メス 8 kg (18 lb)
体高 オス 35 to 43 cm (14 to 17 in)
メス 33 to 41 cm (13 to 16 in)
外被 ダブル
毛色 赤、オレンジ、黄色、ゴマ、黒と黄褐色、または白
出産数 平均 3 匹
寿命 12-15 年
イヌ (Canis lupus familiaris)

柴犬(しばいぬ)は、日本原産の日本犬の一種。「しばけん」とも言われる。日本犬の中で唯一の小型犬で、オスは体高38 - 41 cm、メスは35 - 38 cmの犬種。基本的には小型犬に分類される。最近では中型犬に分類される事もある。

日本の天然記念物に指定された7つの日本犬種(現存は6犬種)の1つで、指定は1936年昭和11年)12月16日。日本における飼育頭数は最も多い。日本犬保存会(日保)によれば、現在[いつ?]日本で飼育されている日本犬種(6犬種)のうち、柴犬は約80%を占める[1]

日本国外でも人気が高く、日本語の読みをそのままローマ字にした「Shiba Inu」、略称の「Shiba」という名前で呼ばれている。

名前の由来[編集]

「柴犬」という名前は中央高地で使われていたもので、文献上では、昭和初期の日本犬保存会の会誌『日本犬』で用いられている。一般的には、「」は小ぶりな雑木を指す。

由来には諸説があり、以下の3説が代表的である。

  • 柴藪を巧みにくぐり抜けて猟を助けることから。
  • 赤褐色の毛色が枯れ柴に似ている(柴赤)ことから。
  • 小さなものを表す古語の「柴」から。

歴史[編集]

柴犬の誕生[編集]

1930年、島根県の二川村(現在 益田市美都町)で日本の古来種である石見犬から誕生した。

柴犬の系統[編集]

ハイイロオオカミ

シャー・ペイ

柴犬

チャウ・チャウ

秋田犬

バセンジー

シベリアン・ハスキー

アラスカン・マラミュート

アフガン・ハウンド

サルーキ

その他

他品種と遺伝的に分岐した9品種のクラドグラム[2]
黒毛

遺伝的には古くからの血を受け継ぐ品種の一つで[注釈 1]DNA分析からは次のように順次分岐してきたとされている(右図参照)。まず、イヌがハイイロオオカミから分岐した。そのイヌが、(1)柴犬、秋田犬などのアジアスピッツ系、およびチャウチャウシャー・ペイなどの青舌マスティフ系になる系統と、(2)バセンジーアフガン・ハウンドなどのハウンド系およびシベリアン・ハスキーアラスカン・マラミュートなどの北極スピッツ系になる系統と、に分岐した。その後(1)の系統からシャー・ペイが分岐して別れ、残りが柴犬・チャウチャウ・秋田犬群の系統となった。柴犬はこの時点の系統から最初に分岐しておりDNA分析からは最もオオカミに近い犬種である。なお残りのチャウチャウ・秋田犬群はその後それぞれに分岐した[2][3]

縄文犬と柴犬の歴史[編集]

日本列島においては縄文時代早期からイヌが出現し、縄文犬と呼ばれている。縄文犬の骨は各地の貝塚から出土しており、これまでに200点以上の犬骨が出土している。縄文犬は猟犬として用いられ、丁重に埋葬された出土事例が多い。人の埋葬に伴う出土事例もあり、特に女性の埋葬に係る呪術的な位置づけであったとする説もある。縄文犬は縄文早期には体高45センチメートル程度の中型犬で、後に島嶼化を起こして小型化し、縄文中期・後期には体高40センチメートル程度になる。弥生時代にはアジア大陸から別系統の弥生犬がもたらされ、縄文犬と形質が異なる。多くは柴系であるとされ毛色は不明であるが、大部分は額段(ストップ)がごく浅く、大きな歯牙を持つ。柴犬の熱心な愛好家には、ほっそりした筋肉質の体格や軽快で俊敏な動き、野性的な鋭い警戒性、人間との強い信頼関係とともに、このような縄文犬の特質を柴犬に求める人もいる。

昔から本州各地で飼われ、古くから、ヤマドリキジなどの鳥、ウサギなどの小動物の狩猟、およびそれに伴う諸作業に用いられてきた犬である。信州長野県)の川上犬、保科犬、戸隠犬、美濃岐阜県南部)の美濃柴犬山陰の石見犬や因幡犬など、分布地域によっていくつかのグループに細分されていた。第二次世界大戦後の食糧難の時代や、その後の1952年(昭和27年)に犬ジステンパーが流行したことによって頭数が激減した[4]

現在大多数を占めているいわゆる信州柴犬は、昭和初期の保存運動の中で、島根生まれの雄犬「石」(いし)と四国産の雌犬「コロ」[5]を交配して作られたアカ号の子孫が長野県へ移入・繁殖されたものを源流としており、その呼び名からしばしば誤解を受けるが信州地方原産種ではない。このため、天然記念物に指定された7犬種の中で、柴犬のみが地方名を冠していない。

純粋な日本犬は、洋犬との交雑が進み、大正末期には全国の多くで見かけなくなっていた。このため日本犬保存会が設立された1928年頃から、有志が、山間部の猟師らが飼っていた日本犬を探して譲り受け、「山出しの犬」として育てるようになった。コロはそのうちの一頭で、日保会報の記事などから高知県本川村(現在のいの町北部)で1935年に生まれたと推定される。石は1930年生まれの石州犬で、日本犬を探索していた中村鶴吉が島根県二川村(現在の益田市南部)で見出した。この2頭の曾孫に当たる中(なか、1948年4月生まれ)の血統が、毛皮需要や食糧難で激減していた柴犬を戦後復活させる中心になった。このため、石が生まれ育った下山信市の家を増築して「石号記念館」が設けられ、二川地区は「柴犬の聖地石号の里」を掲げて、愛犬家を呼び込む村おこしを図っている[5]

特性[編集]

子犬
白柴
  • 温暖湿潤気候に強い。
  • 人間を含めた自分の周りの生き物をランク付けする習性があるので躾で人間の方が上であると教えないと飼い主に反抗する個体になってしまう。躾は1歳頃までに完了しなければ、その後に性格が大きく変わる事はない。躾が成功すれば主人に対しては非常に忠実、よそ者に対しては馴れ馴れしくせず、賢く勇敢で警戒心も強いため、番犬にも適する。
  • 本来は山地や山あいで小動物の狩猟を手伝ってきた犬だが、現在は主に家庭犬として愛されている。しかし、今も狩りやニホンザルを追い払うモンキードッグなどをして活躍している柴犬もいる。
  • 柴犬の一般的な特徴は、短毛・立ち耳・巻き尾などにある。
  • 日本犬保存会の定めた犬種標準では体高が雄38cm - 41cm、雌35cm - 38cm。体重は雄9kg - 11kg程度、雌7kg - 9kg程度[1]。毛色は赤(茶)・胡麻・黒、まれに白などがあり、尾形も左巻き・右巻きなど、個体によって違う。
  • 被毛は真っすぐで硬いトップコートと柔らかく縮れたアンダーコートによる二重被毛であり、年2回毛が生え替わる。一般に、雌より雄の方が体高・体長ともにやや大きい。特に赤毛は、柴犬の飼育数の中で8割ほどを占める人気の色である。一方、胡麻毛は色の組み合わせが繊細で生まれる確率が低いため、飼育数が一番少ない[6]
  • DNA分析からはオオカミに比較的近い犬種とされている[2][3]
  • 柴犬も含めた日本犬の一般的な性格として、主人と認めた人間に比較的忠実であること、かつ警戒心と攻撃性が強めという傾向が挙げられる。古代犬種にしばしば見られるように大胆で独立心が強く、頑固な面も持ち合わせており[4]、洋犬に慣れた人には訓練が難しい場合もある。ただ、番犬向きの警戒心が強い個体だけではなく、ペット向きで見知らぬ人にも友好的な個体も存在する。また、雌よりも雄の方が比較的獰猛であるという傾向がある。
  • 獲物を直接追う猟犬として使われてきた長い歴史があり、ガンドッグ英語版などの役割に合わせて育成改良された欧州の猟犬と比べ、視界に入った動くものを追いかけて捕らえようとする捕食本能が極めて強い。興奮しやすい面もあり、秋田犬紀州犬などとともに咬傷事故が多い犬種とされている。

豆柴犬[編集]

豆柴犬(まめしばいぬ)は、愛玩用として、通常の柴犬よりも小型の系統のものを選んで交配し、繁殖させた柴犬。あくまでも小柄な柴犬であり、独立した犬種ではない。1955年(昭和30年)頃より、京都宇治市)樽井荘の鷹倉が交配・繁殖に努めた。 また、2008年平成20年)よりNPO法人日本社会福祉愛犬協会(KCジャパン)が[7]2018年平成30年)からは一般社団法人日本豆柴犬協会[8]、それぞれ豆柴犬を独自に公認している。

豆柴犬購入によるトラブル[編集]

柴犬は年間6万頭 - 7万頭ほど生まれるが、このうち豆柴犬として取引されるのは500頭前後である。昨今、この豆柴の取引におけるトラブルが増えている。前提として、豆柴は小型の柴犬同士を交配させたものに過ぎないため、飼っているうちに豆柴とは言えないほど大きくなってしまうケースが存在する。豆柴はこのことをあらかじめ理解した上で、一般的な柴犬の成犬に見合う環境で飼う必要がある。また、柴犬を幼犬時の食餌制限により成長を抑制し小さく育てたものを売る業者、小柄に生まれた柴犬を豆柴と称して売る業者、普通の柴犬の子犬を豆柴として売る業者なども存在し、それらがトラブルを生む大きな要因となっている。さらに、後述のように豆柴を独立した血統種と認める登録機関は少ないため、実体のない架空の畜犬団体名義の血統書を偽造の上、インターネット上で生体販売した業者が、業務停止命令を発せられる事態にも至っている[9]

日本犬保存会(日保)、ジャパンケネルクラブ(JKC)など、日本の主要な登録機関では豆柴を犬種として公認しておらず[1][10]、KCジャパンまたは日本豆柴犬協会の登録個体を新規で本登録・予備登録することは事実上不可能である。[11][12]

地柴[編集]

著名な柴犬[編集]

最も影響のある動物100に選出された柴犬まる

柴犬メインの作品[編集]

この一覧では、柴犬が「作品テーマ」となっている作品、もしくは「主要キャラクター」として登場する作品のみを一覧とする。

登場する映画・ドラマ[編集]

テレビ番組[編集]

  • 和風総本家 - 看板犬及び番組のマスコット的存在で登場(豆助)。

漫画・アニメ番組[編集]

キャラクター[編集]

その他柴犬が登場する作品[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 以前はアメリカンケネルクラブによって古代犬種(Ancient dog breeds)という用語が使われていたが、もはや使われていない。

出典[編集]

  1. ^ a b c 柴犬”. 公益社団法人 日本犬保存会. 2023年9月10日閲覧。
  2. ^ a b c Parker, H.G.; Kim, L.V.; Sutter, N.B.; Carlson, S.; Lorentzen, T.D.; Malek, T.B.; Johnson, G.S.; DeFrance, H.B.; Ostrander, E.A.; Kruglyak, L. (2004-05-21). “Genetic structure of the purebred domestic dog”. Science 304 (5674): 1160. doi:10.1126/science.1097406. PMID 15155949. https://pdfs.semanticscholar.org/95a7/140e7dca90a5cde7db81bf571df563ed02fc.pdf. 
  3. ^ a b Derr, Mark (2004年5月21日). “Collie or Pug? Study Finds the Genetic Code”. ニューヨーク・タイムズ. https://www.nytimes.com/2004/05/21/us/collie-or-pug-study-finds-the-genetic-code.html 2007年8月20日閲覧。 
  4. ^ a b ”. アニマルプラネット. Discovery Networks International. 2016年4月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月29日閲覧。
  5. ^ a b 【はじまりを歩く】柴犬(島根県、高知県)山間に残った「祖」となる犬『朝日新聞』土曜朝刊別刷り「be」2021年6月19日6-7面(同日閲覧)
  6. ^ Shi-ba編集部 編『はじめての柴犬との暮らし方』日東書院本社〈いちばん役立つペットシリーズ〉、2014年3月。ISBN 9784528013162 [要ページ番号]
  7. ^ 豆柴ガイド”. 日本社会福祉愛犬協会. 2018年12月29日閲覧。
  8. ^ 日本豆柴犬協会”. 日本豆柴犬協会. 2022年8月4日閲覧。
  9. ^ “「豆柴」犬業者に業務停止命令 血統書付きと誇大広告”. 47NEWS. オリジナルの2009年10月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20091023052757/http://www.47news.jp:80/CN/200910/CN2009102001000922.html 2018年12月29日閲覧。 
  10. ^ ティーカッププードル、豆柴について”. 一般社団法人ジャパンケネルクラブ. 2018年12月29日閲覧。
  11. ^ 【重要】アペンディクス登録について”. 一般社団法人ジャパンケネルクラブ. 2022年8月4日閲覧。
  12. ^ 他団体の血統書をお持ちの方へ”. 公益社団法人日本犬保存会. 2022年8月4日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]