アーキテクチャ

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アーキテクチャarchitecture)は、英語で「建築学」、「建築術」、「構造」を意味する語である。

分野によってはアーキテクチュアアーキテクチャアーキテクチャーともいうが同じ意味であり、英語での発音は/ˈɑrkətɛktʃər/ であり、アーキテクチャーが一番近い。

語源[編集]

語源は古代ギリシャ語の「αρχιτέκτων arkhitekton」(アルキテクトーン)である。これから、ウィトルウィウスが著書『De Architectura』の中で architectus(アルキテクトゥス)というラテン語を使った。この語は「architectura」(アルキテクトゥーラ)と変化し、これからおそらくはフランス語を経由し、英語の architecture(アーキテクチャ)になった。

αρχιτέκτων arkhetekton は、「主な」「第1」「長」などの意味の αρχώς arkhos(アルコース)と、「職人」、「工匠」、「名匠」、「大工」などの意味の τέκτων tekton(テクトーン)からなる。

ただし、ウィルウィトスが使った architectus は、直接には αρχιτέκτων arkhitekton ではなく αρχιτεκτονική arkhitektonike(アルキテクトニケー)もしくは αρχιτεκτονική τέχνη arkhitektonike tekhne(アルキテクトニケー・テクネー)に由来するという説もある(ブルーノ・ゼヴィ Bruno Zevi など)。

建築[編集]

建築学でアーキテクチュアとは建築の様式のこと。建築物の構造や設計法工法を含めた全体を意味する用語であるが、庭園船舶等もarchitectureで、明治時代にarchitectureを造家学、neder architectureを造船学、landscape architectureやlandscape gardeningを造園学、と和訳していた。

ウィトルウィウスの『De Architectura』は世界初の建築の専門的理論書であるとされ、その思想性は現代においてもたびたび参照されている建築原典である。このことからアーキテクチュアという言葉に思想性、または設計思想といった意味の含みがもたらされたとされる。

コンピュータ[編集]

コンピュータ分野では、IBMSystem/360でこの用語を使用し、以後は広く使用されるようになった(詳細はコンピュータ・アーキテクチャ#歴史的観点)。System/360におけるそれの定義としては、コンピュータ・プログラムから見た機械の標準化され文書化された仕様であり、個々の機種やモデルに特有な実装は含まれていない。具体的には、レジスタ等の仕様、CPU命令セット入出力命令であるチャネルへのコマンドが、一般購入も可能なマニュアルとして出版された。

その後、コンピュータに関する構造や設計全般に「アーキテクチャ」の語が使われるようになり、また歴史を遡り「ノイマン型アーキテクチャ」や「x86アーキテクチャ」などにも使われているが、これらは当初からシリーズ化や上位互換を意図して標準化・文書化されたものではなく、インテルマイクロアーキテクチャなどは特定の実装を含んでいる。日本語では「設計思想」などと意訳されることもある。

現代では、特に命令セットアーキテクチャの意味のことが多い(前述のSystem/360における定義では、チャネルの仕様が含まれる点が違う)。更には実装を含んだ意味、特定のコンピュータまたはコンピュータシリーズの共通仕様、あるいは企業や組織における採用技術標準化などの意味でも使用されており、代表的な用語には以下がある。

自動車[編集]

自動車産業では1970年代から始まった『複数車両で共有される構成部品のセット』という考え方をプラットフォームとよび、より技術的な側面からはこれを『車両アーキテクチャ』ともよんでいる。

社会思想[編集]

人間の行為を制約したりある方向へ誘導したりするようなウェブサイトやウェブコミュニティの構造、あるいは実際の社会の構造もアーキテクチャと呼ぶ。

ジョージ・リッツァは著書『マクドナルド化する社会』において、アーキテクチャの具体例としてファーストフード店の硬いイスをあげている。客を長居させず、それによって回転率を上げるような設計になっている。

ローレンス・レッシグは、著書『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』において、人間の行動を制約するものとして、法律規範市場、アーキテクチャの4つを挙げた。

取締りと刑罰によって行動を制約する(法律)、道徳を社会の全員に教え込んで行動を制約する(規範)、課税や補助金などで価格を上下させて行動を誘導する(市場)といった手法のほかに人間の行動を制約する手法として、社会の設計を変えることで社会環境の物理的・生物的・社会的条件を操作し人間の行動を誘導するという、「アーキテクチャによる制約」が考えられる。社会の仕組みを変え、ある選択肢を選びやすくする・ある行動を採ることが不快になるようにするといった環境に変えることにより、社会の成員が自発的に一定の行動を選ぶように誘導し、取り締まりを行ったり子供たちに規範を教育するよりも安いコストで社会を管理することができる。

経済学[編集]

行動経済学の分野で、「選択アーキテクチャー」という言葉が使われている。

経営戦略[編集]

最新の経営の分野では、アーキテクチャ[1]を産業連関のビジネスモデル、構成、仕組み、構造、構築という意味で使われている。システムより上位概念である。昨今のネットワーク化した社会においてのエコシステムも、アーキテクチャである。

アーキテクチャの視点で経営戦略を構築する必要が出てきた。

アーキテクチャは、ビジネスアーキテクチャとテクノロジーアーキテクチャからなっている[1]

  • ビジネスアーキテクチャは顧客のプロセスやバリューチェーンを意味する。
  • テクノロジーアーキテクチャは、データ、ソフトウェア、ハードウェアを指す。

脚注[編集]

  1. ^ a b アーキテクチャとは”. アイ&カンパニー. 2016年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月29日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]